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我輩は影のオーナーである。名を「さちこ」という。
普段は地方都市にある本社社長室の座布団型デスクの上で 瞑想している。


時折、店の方から「視察に来い」との要請がある。面倒くさいことこの上ないが、従業員から献上されたホッケに免じて、行ってやることにしよう。

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2011年5月 3日 (火)

常連客のささやかな復興支援

我が店には、たまにお客様が土産を置いていくことがある。


例えばちょっと寄り道して買ってきたミスドやケンタッキー、近所の甘味屋で買った焼き菓子、旅先で買ったまんじゅうなどだ。一度、ぜひ私にといって猫缶を貢いできた客もいた。持ってくるものは何であれ、その気持ちはとても嬉しいものである。


そんなある日、我が店の常連・H井嬢が大きな荷物を持ってやってきた。

いつものようにレモネードを頼みながら(彼女は酒が飲めないのだ)、荷物から大きなビンを取り出し従業員に差し出した。

「これ みなさんで飲んでください!」


手渡されたのは何とも濃厚そうなぶどうジュース。
「ホントにブドウを搾ってあるんで、底の方に種とか皮とかが沈んでます。飲むときは絶対に振らないでくださいね!」と念を押されるほどだから、きっとよほど濃厚なのだろう。


仕事があって旅行にも行っていないはずなのに、一体どういった風の吹きまわしだろうか。
ちょっとたずねてみたところ、私たちの予想を超えた返事が返ってきた。

「これは、東北地方の復興支援のためです!」

驚く従業員に向かいH井嬢は話を続ける。


「ほら、いま東北地方が大変ですよね。
私にも何かできることはないかと考えたんですが、力も体力も根性も無い私がボランティアに行っても迷惑をかけるだけなので……。
ちょっとサイクリングに行っても200mごとに休憩したくなっちゃうし、
もし向こうで作業してても『ちょっとお茶でも飲みましょうよ~』なんて、すぐ言っちゃいそうじゃないですか。


だから、私ができる一番のことといえば、東北物産をいっぱい買うことなんです!!!」


彼女の迫力に気圧される私達に、「あ、ついでに、しばらく友達の誕生日プレゼントも、東北物産で統一するつもりです!!もう予告もしてあります!」とこともなげに言い放つH井嬢。


担いできた大きな荷物には、もちろん大量の東北物産が詰め込まれていた。
最近は飲み会に「南部美人」を自腹で差し入れし、その横でひたすら南部せんべいをかじっているそうだ。ここまで徹底すると何か鬼気迫るものがある。


そんなH井嬢は、帰り際に従業員にもう一言宣言していった。


「実は私、日本の景気のためにも頑張ってるんですよ!

日本の景気を良くするために、外食する時にはデザートを一品余計につけるようにしてます!」


ということは、日本の景気が良くなるにつれ、スリムな彼女がどんどん肥えていくということだろうか。何でもいてもたってもいられない気持ちになってくる。


自らの体型を犠牲にしてまで復興のために戦うとは……。
そんなH井嬢に敬意を表し、私もできることを一つずつやっていこうと思う。
とりあえず私も食事を一回増やそう。私のように権威のある存在が、デザート一つでは生ぬるいというものだ。

これは決して我欲ではない。復興への小さな足がかりである。


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